ハードディスクの処分方法|法人は破壊・消去・売却で分ける
2026/9/17

サーバー室の棚の奥に、抜き取ったハードディスクを詰めた段ボールが置かれています。多くの会社で見かける光景です。本体は処分したのに、ドライブだけが残っています。捨てていいのか、壊せばいいのか、誰も決めていないからです。放置は情報漏えいの入口になりますが、慌てて穴を開けても安心にはなりません。壊し方によっては、記録面が無傷で残ります。では、何を基準に決めればよいのでしょうか。「読めなくする」工程を処分の前に置くこと。答えはそこから組み立てられます。
ハードディスクの処分は「読めなくする」と「手放す」の2段階

「処分」という言葉には、2つの工程が同居しています。記録を読めなくする工程と、物として手放す工程です。前者を飛ばした後者は、情報を載せたまま社外へ出すことと同じになります。
初期化は「読めなくする」に入らない
フォーマットや初期化は、領域を使える状態に戻す操作です。記録そのものは残り、復元ソフトで読み出せるものです。総務省が自治体向けに示す資料も、OSや記憶装置の初期化では記憶素子にデータが残るため適当でないと明記しています。
つまり「初期化してから捨てた」は、読めなくしていない状態で手放したことになります。棚の奥の段ボールも、いまこの状態にあるのです。
2026年3月、総務省が「破壊一択」をやめた
総務省が自治体向けに定める情報セキュリティの指針は、住民情報を保存した記録媒体について、長らく物理破壊のみを求めてきました。2026年3月の改定で、抹消の方法を「破壊」「除去」「消去」の3つに整理し、再利用する媒体には除去も認める形に変わっています。
民間企業に直接の義務はありません。ただ、最も厳しい基準を置いてきた公的機関が物理破壊以外の道を認めたという事実は、企業が処分の方針を決めるときの物差しになります。
ドライブ単体で出てくる3つの場面
ハードディスクが単体で残るのは、次のような場面です。
- サーバーやNASの更新で、筐体はリース返却し、ドライブだけ抜き取った
- 外付けドライブやバックアップ用の媒体を世代交代させた
- パソコンを廃棄する前に「念のため」抜いて、そのまま保管している
いずれも台帳から外れやすい点が共通しています。本体の資産管理番号はあっても、ドライブのシリアル番号までは記録されていないことがほとんどでしょう。
物理破壊で本当に読めなくなる条件

壊せば終わり、と考えたくなります。私もそう思っていました。ところが改定後の指針を読むと、壊し方の条件がかなり具体的に書かれています。
HDDは記録面、SSDはチップを壊す
総務省の資料では、HDDは内部の円盤を多点方式で最下層まで貫通させる専用装置を使うこととされています。筐体に対して小さな円盤を組み込んだ製品があり、1点だけの穿孔では円盤に届かない場合があるためです。破壊後の例として、4か所の貫通が示されました。
SSDはさらに条件が違います。HDD向けのシュレッダーでは細断が粗く、フラッシュメモリのチップが壊れずに残るのです。指針は専用装置でチップを破壊することを求め、粉砕の目安として2mm以下を挙げています。
磁気消去が効かない媒体
HDDには消磁装置という選択肢があります。ただし、SSDは電荷で記録するため、磁界をかけても消えません。指針はさらに、HDDとSSDを組み合わせたハイブリッド型や、熱アシスト方式の大容量HDDも、消磁では抹消できないと注意しています。
「磁気消去済み」と書かれた報告書を受け取ったら、対象の媒体がその方式で消える種類だったかを確かめる必要があるでしょう。
壊した後は産業廃棄物になる
破壊した媒体は事業所から出る廃棄物なので、産業廃棄物として処理します。許可を持つ業者へ委託し、契約書とマニフェストを整える流れです。群馬県が公開する一覧では、無許可の業者への委託は5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金が定められています。
パソコン本体とあわせて出す場合の扱いは、法人パソコンの処分の記事にまとめています。
消去して売る、という3つめの出口

破壊すれば、媒体の価値はゼロでしょう。正常に動く媒体まで壊す必要があるのか。ここに検討の余地があります。
再利用するなら「除去」で足りる
改定後の指針が示す「除去」は、媒体の全領域を専用コマンドで抹消する方法です。HDDならATAのSecurity Erase、SSDならBlock EraseやNVMeのSanitize、あるいは暗号鍵を破棄する暗号化消去が該当します。米国NISTのSP 800-88 Rev.2でいうPurgeに相当し、研究所レベルの復元にも耐える水準です。しかも媒体はそのまま使えます。
指針は判断の例として、再利用しないなら破壊、再利用するなら除去、という分け方を挙げました。売却する媒体には、この除去の水準でデータ消去を行えばよいことになります。
判断表:機密度・媒体・故障の有無で分ける
3つの条件で出口が決まります。
条件 | 出口 |
|---|---|
正常に動作するHDD・SSDで、再利用や売却をする | 除去(専用コマンド・暗号化消去)のうえ売却 |
故障して消去コマンドが通らない | 物理破壊(HDDは記録面、SSDはチップ) |
個人番号など機密度が高く、社内規程で破壊を指定 | 破壊のうえ産業廃棄物として処理 |
USBメモリ・光学媒体 | 破壊のみ |
故障品と正常品を同じ箱に入れておくと、この振り分けができません。段ボールに詰める前に、動作の有無だけでも分けておくと後が楽になります。
証跡は写真とログ、個体はシリアル番号で
破壊は、作業前後の写真で確認できます。除去は見た目が変わらないため、ログなどの証跡で確認することが求められました。どちらの場合も、媒体のシリアル番号と結びついた記録が残っていることが条件です。個人情報保護委員会も、委託先に対する必要かつ適切な監督を求めています。証明書に何が書かれているべきかは、データ消去証明書の必須項目で扱いました。
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まとめ:壊すか消すかは、その後どうしたいかで決まる

冒頭の段ボールに戻ります。あの箱が片づかなかったのは、壊すか捨てるかの二択で考えていたからでした。実際には、消去して売る道があり、壊すにも媒体ごとの条件があり、壊した後には産業廃棄物としての手続きがあります。
判断の順番は決まっています。まず動作の有無で分ける。次に機密度で破壊指定の有無を確かめる。残った正常品は除去の水準でデータ消去し、売却に回す。この順番で分けると、箱の中身のほとんどは廃棄物ではなく資産だったと分かることが少なくありません。
ただ、シリアル番号を記録していないドライブは、どの出口を選んでも証跡が残りません。段ボールに詰める前の一手間が、後の監査対応を左右します。
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よくある質問
Q1. ハードディスクに自分で穴を開ければ処分できますか?
1点の穿孔では記録面に届かない場合があります。総務省の資料では、専用装置で多点方式により最下層まで貫通させることが示されています。手作業のドリルでは、この条件を満たす確認が困難です。
Q2. SSDもハードディスクと同じ方法で処分できますか?
同じ方法では不十分です。SSDは磁気消去が効かず、HDD向けのシュレッダーでは内部のチップが残ります。専用コマンドによる除去か、チップを破壊する専用装置が必要になります。
Q3. 破壊したハードディスクは、一般ごみとして出せますか?
事業所から出た媒体は産業廃棄物です。許可を持つ業者へ委託し、マニフェストを交付する必要があります。無許可の業者への委託には罰則が定められています。
Q4. サーバーから抜いたドライブだけでも買い取ってもらえますか?
正常に動作する媒体であれば、単体でも査定の対象です。1台から承り、関東1都6県は出張で伺います。故障品はデータ消去の代わりに破壊での対応です。
Q5. 消去してから売却した場合、情報は本当に復元できませんか?
専用コマンドや暗号化消去による除去は、研究所レベルの復元にも耐える水準として定義されています。作業のログとシリアル番号を突き合わせた記録を受け取れば、実施を確認できるでしょう。
Q6. 破壊と消去のどちらが安いですか?
破壊は媒体の価値がなくなるうえ、産業廃棄物の処理費用が発生します。消去して売却できる媒体であれば、費用が買取額で相殺されるかもしれません。正常品と故障品を分けて見積りを取ることをおすすめします。
Q7. 段ボールに何年も入っていた古いドライブでも対応できますか?
対応可能です。動作するかどうかを引き取り時に確認し、正常品は消去のうえ査定、故障品は破壊に振り分けます。事前に台数の目安をお知らせいただければ、見積りが早く出せるものです。
Q8. 消去や破壊の証明書はもらえますか?
発行しています。対象媒体の型番とシリアル番号、実施日、手法、結果を記載したデータ消去証明書をお渡しします。破壊の場合は作業前後の記録もあわせてご提供が可能です。
参考文献
1. タイトル:総務省セキュリティポリシーガイドライン改定「機器の廃棄・データ消去」における補足について
出典元:総務省
URL:https://www.soumu.go.jp/main_content/001066789.pdf
2. タイトル:データの消去に関する注意喚起
出典元:個人情報保護委員会
URL:https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/data_syokyo/
3. タイトル:廃棄物処理法における罰則一覧表(令和7年6月1日施行後)
出典元:群馬県
URL:https://www.pref.gunma.jp/site/sanpai/131504.html
4. タイトル:SP 800-88 Rev. 2, Guidelines for Media Sanitization
出典元:National Institute of Standards and Technology(NIST)
URL:https://csrc.nist.gov/pubs/sp/800/88/r2/final
5. タイトル:データ消去技術 ガイドブック
出典元:データ適正消去実行証明協議会(ADEC)
URL:https://adec-cert.jp/files/request/DATAWIPEGUIDEBOOK.pdf
6. タイトル:データ消去について
出典元:一般社団法人パソコン3R推進協会
URL:https://www.pc3r.jp/office/data_erase_front.html
7. タイトル:ハードウェアからの情報漏えいリスクとその対処法
出典元:総務省
URL:https://www.soumu.go.jp/main_content/000779670.pdf